集団発達の段階モデル(タックマン・モデル)Stages of Group Development
一言で言うと小集団は、互いを探りながらリーダーに頼る形成期、対立と抵抗が表れる混乱期、まとまりと新しい規範が生まれる統一期、役割が柔軟になり力を課題に注ぐ機能期の四つの段階を順にたどる、とするモデル。Tuckman (1965) が50本の文献を整理して提案した。
中核的な問い
Tuckman (1965) は、小集団の研究では、時間とともに集団がどう変わるかという問題が比較的なおざりにされてきたと指摘した。その大きな理由はおそらく、研究者が集団を短い時間しか動かさず、時間による変化という「問題」を避けがちだったことにある。集団の発達を扱った論文の多くは、集団療法や人間関係の訓練グループ(Tグループ)の場から生まれており、厳密な実験の統制も独立変数の操作もなかった。集団は、どのような順序で発達していくのか。Tuckman は既存の研究を整理し、それらを統合する枠組みを示そうとした。
主張とメカニズム
Tuckman (1965) は、集団の発達段階を扱った50本の論文を、集団の置かれた場(集団療法、Tグループ、自然の集団と実験室の集団)によって分けた。そのうえで、観察された段階を、集団の中の人間関係に関するもの(集団構造)と、課題への取り組みに関するもの(課題活動)に分けて整理した。
そこから Tuckman は、四つの一般的な段階を提案した。第一に、集団は形成期(forming)から始まる。人間関係と課題の両面で、何が許されるかの境界を試すことを通じて方向づけを行い、リーダーやほかのメンバー、既存の基準に頼る関係をつくる。第二の混乱期(storming)では、人間関係をめぐる対立と二極化が生じ、課題の面では感情的な反応が表れる。これらは集団からの影響や課題の要求への抵抗として働く。
第三の統一期(norming)では、その抵抗が乗り越えられ、仲間意識とまとまりが生まれ、新しい基準と役割が採り入れられる。課題の面では、個人的な意見が率直に述べられるようになる。第四の機能期(performing)では、人間関係の構造が課題を進めるための道具になる。役割は柔軟で機能的になり、集団の力は課題に注がれる。
Tuckman は、提案した段階と文献に見られる段階はよく当てはまると述べた。ただし、当てはまりは完全ではなかった。二つの段階を一つにまとめて記述した研究、一部の段階が見られなかった研究、より多くの段階を見いだした研究もあった。Tuckman は、この順序は集団の構成、存続期間、課題の違いを超えて保たれたように見えるが、それが崩れる条件の範囲はあるはずで、検討した研究はその範囲を大きく超えていなかったと考えるべきだとした。
なお、Gersick (1988) によれば、Tuckman & Jensen (1977) は後の文献レビューでこのモデルをおおむね維持し、最後に解散期(adjourning)を加えた。
身近な例
新しく立ち上がった部署横断のプロジェクトチームがあるとしよう。最初の数回の会議では、メンバーは互いの様子をうかがい、リーダーの指示を待っている。方針が見えてくると、進め方や役割分担をめぐって意見がぶつかり、会議の空気が重くなる。そこを乗り越えると、「このチームではこうする」という暗黙のルールができ、率直に意見を言い合えるようになる。やがて、誰が何をするかを細かく確認しなくても仕事が回るようになる。
チームの立ち上げでぎくしゃくするのは、発達の途中の段階だと捉えることもできる。ただし、どのチームも必ずこの順序をたどるとは限らない(批判と境界条件を参照)。
主要概念
- 形成期(forming)
- 方向づけ、境界の試し合い、リーダーや既存の基準への依存が特徴の最初の段階。
- 混乱期(storming)
- 人間関係をめぐる対立と二極化、課題への感情的な反応が表れる段階。集団の影響や課題の要求への抵抗として働く。
- 統一期(norming)
- 抵抗が乗り越えられ、まとまりが生まれ、新しい基準と役割が採り入れられる段階。
- 機能期(performing)
- 人間関係の構造が課題を進める道具となり、役割が柔軟で機能的になって、集団の力が課題に注がれる段階。
- 集団構造と課題活動(group structure and task activity)
- Tuckman が集団の行動を整理した二つの領域。前者はメンバーどうしの人間関係、後者は課題への取り組みを指す。
代表的な展開研究
- Gersick, C. J. G. (1988). Time and transition in work teams: Toward a new model of group development. Academy of Management Journal. DOI ↗実在のプロジェクト・チームを最初から最後まで観察し、チームが共通の段階を順にたどってはいなかったことを見いだした。代わりに、期限までの中間点で大きく方針を転換するという、断続均衡のモデルを提案した。
批判と境界条件
Tuckman (1965) 自身が、検討した文献の限界を挙げている。第一に、文献は小集団の発達を代表しているとはいえない。集団療法の研究が多すぎ、自然の集団や実験室の集団の研究が少なすぎるので、一般化には注意が必要で、示されたのは主に集団療法の場での発達だとした。第二に、ほとんどの研究は一つの集団の観察に基づき、観察は量的でなく質的で、療法家や訓練者である観察者の偏りを受けやすい。第三に、独立変数の統制や操作がないため、条件の違いが発達にどう影響するかについては結論を出さなかった。なお Tuckman は、モデルを文献からおおむね帰納的に導いたと認めたうえで、常識に照らしても妥当であり、ほかの領域の発達研究とも整合すると考えていた。
Gersick (1988) は、期限のある課題に取り組むチームを観察し、最初に調べた4つのチームでは、たどる活動の順序がチームによって大きく異なり、段階の順に進むはずの活動が同時に起きたり逆になったりしていたと報告した。Gersick はまた、ほかの研究者による妥当性への批判があるにもかかわらず、従来のモデルは経営学の教科書で集団発達の事実として広く紹介され続けていると指摘した。さらに、Tuckman 自身も1965年に指摘していたように、従来のモデルは、変化が何をきっかけに、どのような仕組みで起こるのか、ある段階にどれだけとどまるのかをほとんど説明せず、集団を環境から閉じたものとして扱ってきたと述べた。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Tuckman, B. W. (1965). Developmental sequence in small groups. Psychological Bulletin. DOI ↗
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