創造性の構成要素モデルComponential Model of Creativity
一言で言うと創造的な成果は、領域に関する技能、創造性に関する技能、課題への動機づけの三つがそろったときに生まれ、とくに内発的な動機づけが創造性を高め、外からの制約はそれを損ないうる、とする理論。
中核的な問い
創造性の研究は、長く「創造的な人とはどんな性格か」に関心を寄せてきた。しかし、同じ人でも、状況によって創造的になったりならなかったりする。創造性を生む個人の要素は何か。そして、評価や報酬といった周囲の社会的な条件は、創造性にどう影響するのか。
主張とメカニズム
Amabile (1983) は、創造性を次のように定義した。「ある成果や反応が創造的であると判断されるのは、それが目の前の課題に対して新しく、かつ適切で、有用で、正しく、あるいは価値のある反応であり、しかもその課題が、決まった手順で解けるものではなく発見的なものである場合である。」あわせて、実際の研究では、その分野に詳しい観察者たちが独立に創造的だと判断して一致するかどうかで、創造性をとらえることを提案した。
このモデルでは、創造的な成果に三つの要素が必要とされる。領域に関する技能は、その分野の知識や技術的な技能である。創造性に関する技能は、固定した見方から抜け出す思考のスタイルや、新しい発想を生むための経験則の知識、粘り強い仕事の進め方などである。課題への動機づけは、課題に対する態度と、自分がなぜそれに取り組むのかという認識である。三つのどれかが欠けると、創造的な成果は生まれにくい。
とくに重視されたのが動機づけである。Amabile は、課題そのものへの興味から取り組む内発的に動機づけられた状態は創造性を助け、評価や報酬など外からの理由で取り組む外発的に動機づけられた状態は創造性を損なう、という原則を示した。動機づけは、社会的な環境によって変わりやすい。そのため、この要素を通じて、周囲の条件が創造性を左右すると考えた。
身近な例
たとえば、絵を描くのが好きな学生が二人いるとしよう。一人は、好きなテーマを自由に描いている。もう一人は、同じ題材を、先生に採点されると知らされたうえで描いている。二人の技術が同じくらいでも、採点を意識した学生は、無難な構図を選び、思い切った工夫を控えるかもしれない。このモデルは、こうした差が技能ではなく動機づけから生じうることを説明する。
主要概念
- 領域に関する技能(domain-relevant skills)
- その分野の知識、技術的な技能、特有の才能など、課題に取り組むための土台となる技能。
- 創造性に関する技能(creativity-relevant skills)
- 固定した見方から抜け出す思考のスタイル、新しい発想を生む経験則の知識、仕事の進め方など。
- 課題への動機づけ(task motivation)
- 課題に対する態度と、自分がそれに取り組む理由についての認識。
- 内発的動機づけ(intrinsic motivation)
- 課題そのものへの興味や楽しさから取り組むこと。
- 発見的な課題(heuristic task)
- 解き方の手順があらかじめ決まっておらず、道筋を自分で見つける必要がある課題。
代表的な展開研究
- Amabile, T. M., Conti, R., Coon, H., Lazenby, J., & Herron, M. (1996). Assessing the work environment for creativity. Academy of Management Journal. DOI ↗職場の環境が創造性を促したり妨げたりする要因を測る尺度を開発し、組織の文脈に理論を広げた。
- Amabile, T. M., & Pratt, M. G. (2016). The dynamic componential model of creativity and innovation in organizations: Making progress, making meaning. Research in Organizational Behavior. DOI ↗構成要素モデルを組織のイノベーションまで含む動的なモデルへと改訂し、進捗や意味づけの役割を加えた。
批判と境界条件
Eisenberger & Cameron (1996) は、報酬が内発的動機づけを損なうという知見を検討し、そうした悪影響は限られた条件でしか生じないと論じた。これは、外発的な動機づけが創造性を損なうという原則の適用範囲に疑問を投げかけるものである。後に Amabile (1993) 自身も、能力を認めたり取り組みを支えたりする外発的な動機づけは、内発的な動機づけと両立しうるとして、原則を修正している。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Amabile, T. M. (1983). The social psychology of creativity: A componential conceptualization. Journal of Personality and Social Psychology. DOI ↗
- Eisenberger & Cameron (1996). Detrimental effects of reward: Reality or myth?. American Psychologist. ↗
- Amabile (1993). Motivational synergy: Toward new conceptualizations of intrinsic and extrinsic motivation in the workplace. Human Resource Management Review. ↗
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