理論・視点

自己決定理論Self-Determination Theory

一言で言うと

人には有能さ、自律性、関係性という三つの基本的な心理的欲求があり、それらが満たされる環境では内発的動機づけや、外からの価値の取り込み(内在化)が進み、成長と健康につながる、とする理論。

説明したい問い人が自分から進んで取り組むのはどんなときで、周囲の環境はそれをどう育てたり損なったりするのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

同じ仕事でも、楽しくて自分から取り組む人もいれば、言われたから仕方なくやる人もいる。やる気の「量」だけでなく「質」の違いはどこから生まれるのか。報酬や命令は、やる気を高めるのか、それとも損なうのか。

02

主張とメカニズム

Ryan & Deci (2000) は、内発的動機づけを「新しさや挑戦を求め、自分の力を伸ばして発揮し、探索し、学ぼうとする、人に本来備わった傾向」と説明した。そして、この傾向が発揮されるかどうかは環境に左右されるとし、有能さ(うまくやれるという感覚)、自律性(自分で選んでいるという感覚)、関係性(他者とつながっているという感覚)という三つの心理的欲求を満たす環境が、それを支えると論じた。この考え方は、報酬が内発的動機づけに与える影響を調べた Deci (1971) 以来の研究の蓄積をまとめたものである。

原典は、外から与えられた動機づけにも質の違いがあると主張する。報酬や罰のためだけに行う「外的調整」、罪悪感や見栄から行う「取り入れ的調整」、その行動の価値を自分で認めて行う「同一化的調整」、その価値が自分の他の価値観と統合された「統合的調整」があり、後になるほど自律的である。価値を自分のものとして取り込むこの過程を内在化と呼ぶ。行動する意図そのものがない状態は「無動機」とされる。

自律性を支える環境では内在化が進み、粘り強さ、成果、心身の健康が高まりやすい。逆に、統制的な報酬や締め付けは、自律性の感覚を損ない、内発的動機づけを弱めうる。

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身近な例

たとえば、プログラミングが好きで自主的に勉強していた新入社員がいるとしよう。上司が細かく手順を指示し、進み具合を常に監視すると、本人は「やらされている」と感じ、以前ほど楽しめなくなるかもしれない。一方、目的を説明し、やり方の選択を任せ、うまくいった点を具体的に伝える上司の下では、面倒な作業でも「自分にとって意味がある」と納得して取り組みやすくなる、とこの理論は考える。

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主要概念

内発的動機づけ(intrinsic motivation)
活動そのものの面白さや満足のために、その活動を行うこと。
外発的動機づけ(extrinsic motivation)
報酬や評価など、活動とは別の結果を得るために行うこと。
基本的心理欲求(basic psychological needs)
有能さ、自律性、関係性という、成長と健康に欠かせないとされる三つの欲求。
内在化(internalization)
外から求められた価値や規則を、自分のものとして取り込んでいく過程。
05

代表的な展開研究

  • Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin. DOI ↗多数の実験をメタ分析し、報酬の種類や与え方によって内発的動機づけへの影響が異なることを検討した。
  • Gagné, M., & Deci, E. L. (2005). Self-determination theory and work motivation. Journal of Organizational Behavior. DOI ↗自己決定理論を職場の動機づけに応用し、組織研究への含意を整理した。
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批判と境界条件

原典自身が、内発的動機づけが生じるのは、新しさや挑戦性、美しさなど、本人にとってそれ自体に面白みのある活動に限られると述べている。そのため、面白みの乏しい活動については、内在化という別の過程で説明する必要がある。報酬が内発的動機づけを損なうという主張については、Eisenberger & Cameron (1996) が、その悪影響は限られた条件でしか生じず、一般に言われるほど大きくないと反論し、論争になった。

研究上の位置づけ

原典Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000)
Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being
分類Theoretical framework
地図の区画組織行動
分析単位個人
理論系譜心理学
REFERENCES

出典

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