理論・視点

高業績作業システムHigh-Performance Work Systems

一言で言うと

採用・選抜、訓練、成果に連動した報酬、従業員の参加といった人事施策を組み合わせて用いると、従業員の能力と意欲が高まり、離職の低下や生産性・財務業績の向上につながるとする視点。

説明したい問い企業の人事のやり方は、離職率や生産性、さらには企業の財務業績まで左右するのか。
01

中核的な問い

人事部の仕事は、給与計算や手続きといった管理業務だと見られることが多かった。しかし、どのような人を採り、どう育て、どう評価し報いるかは、企業の成果そのものに影響するのではないか。もしそうなら、その影響は数字で確かめられるのか。

02

主張とメカニズム

Huselid (1995) は、高業績作業施策(high performance work practices)の効果を次のように説明した。包括的な採用・選抜、成果に連動した報酬と業績管理、広範な従業員の参加と訓練といった施策は、「企業の現在および将来の従業員の知識・技能・能力を高め、意欲を高め、手抜きを減らし、優れた従業員を引き留める一方で、業績の低い者の退出を促す」。つまり人事施策は、従業員の能力を高める経路と、意欲を高める経路の両方を通じて、企業の成果につながる。

Huselid は、米国の約1000社を対象とした調査で、こうした施策の利用度を測った。分析の結果、施策は「従業員の技能と組織構造」にかかわるものと、「従業員の動機づけ」にかかわるものの二つのまとまりに分かれた。そして、これらの施策を多く用いる企業ほど、離職率が低く、従業員一人当たりの生産性が高く、財務業績も高いという関係が見られた。

一方、施策同士がうまくかみ合っているか(内的な適合)や、施策が企業の戦略に合っているか(外的な適合)が業績をさらに高めるという仮説は、あまり支持されなかった。この結果は、特定の施策の組み合わせがどの企業にも有効だとする普遍的な見方と、状況に合った組み合わせが重要だとする見方との論争につながった。

03

身近な例

たとえば、同じ業界の二つの会社を比べるとしよう。一方は、応募者を面接や試験で丁寧に選び、入社後も研修を続け、チームの成果に応じて賞与を出し、現場の改善提案を取り入れている。もう一方は、人手が足りなくなるたびに急いで採用し、研修もほとんど行わない。高業績作業システムの考え方に従えば、前者の会社のほうが社員が辞めにくく、一人ひとりの生産性も高くなり、それが会社全体の業績の差として現れると予想される。

04

主要概念

高業績作業施策(high performance work practices)
採用・選抜、訓練、業績管理と報酬、従業員の参加など、従業員の能力と意欲を高めることで企業の成果を高めるとされる人事施策。
戦略的人的資源管理(strategic human resource management)
人事施策を、企業の戦略や業績と結びつけて考える研究と実践の領域。
内的な適合(internal fit)
複数の人事施策が互いに補い合い、一貫したまとまりになっている程度。
外的な適合(external fit)
人事施策の組み合わせが、企業の競争戦略に合っている程度。
05

代表的な展開研究

  • Delery, J. E., & Doty, D. H. (1996). Modes of theorizing in strategic human resource management: Tests of universalistic, contingency, and configurational performance predictions. Academy of Management Journal. DOI ↗人事施策と業績の関係について、普遍的な見方、状況適合的な見方、施策の組み合わせを重視する見方の三つを整理し、銀行のデータで比較した。
  • Combs, J., Liu, Y., Hall, A., & Ketchen, D. (2006). How much do high-performance work practices matter? A meta-analysis of their effects on organizational performance. Personnel Psychology. DOI ↗高業績作業施策と組織業績の関係をメタ分析で統合し、施策を個別にではなく組み合わせて用いたときに関係がより強いことを示した。
06

批判と境界条件

Gerhart, Wright, McMahan, & Snell (2000) は、この分野の研究の多くが一社につき一人の回答者に人事施策の状況を尋ねており、その回答には大きな測定誤差があることを示した。そのため、施策と業績の関係の大きさが正しく推定されていないおそれがある。また Wall & Wood (2005) は、多くの研究が一時点の調査にもとづいており、人事施策が業績を高めたのか、業績のよい企業が施策に投資できたのかを区別できていないとして、人事施策と業績の関係についての証拠は主張されているほど強くないと批判した。

研究上の位置づけ

原典Huselid, M. A. (1995)
The impact of human resource management practices on turnover, productivity, and corporate financial performance
分類Framework
分析単位組織
理論系譜経済学 · 行動論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。