経営戦略
研究分野「経営戦略」(Strategy)に分類される項目です(理論 39・概念 1・論文 1)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。
理論・視点 39
理論・視点エージェンシー理論
Agency Theory
仕事を任せる人(プリンシパル)と任される人(エージェント)の利害は一致せず、情報も偏っている。その結果生じるズレとコストを、監視や報酬の設計で抑えようとする理論。
問い仕事を他者に任せるとき、相手に自分の利益のために動いてもらうにはどうすればよいか。
企業の行動理論
Behavioral Theory of the Firm
企業は一枚岩の利益最大化マシンではなく、利害の異なる人々の連合体である。目標と実績の差を見ながら、限られた探索とルールに頼って意思決定する、と説明する理論。
問い企業は、現実にはどのように目標を立て、意思決定し、行動を変えるのか。
コンティンジェンシー理論(条件適合理論)
Contingency Theory
「どんな場合にも最善の組織」は存在しない。環境や技術などの条件に組織の形が合っているとき、成果が高まる、とする理論。
問い組織の最適な構造は、どのような条件によって変わるのか。
コア・コンピタンス
Core Competence
企業の競争力の根っこは、個々の製品や事業ではなく、複数の事業にまたがって生かせる技術やスキルの束にある。企業はそれを軸に事業を組み立てるべきだ、とする理論。
問い多角化した企業の競争力は、どこから生まれるのか。
意図的戦略と創発的戦略
Deliberate and Emergent Strategy
実際に実現する戦略は、事前に計画された意図的戦略だけでなく、日々の行動の積み重ねから結果として形づくられる創発的戦略が混ざり合ったものだ、という視点。
問い企業の戦略は、計画どおりにつくられるのか、それとも行動の中から生まれるのか。
破壊的イノベーション
Disruptive Innovation
優良な大企業は、主要顧客の声に応えて製品を改良し続けるからこそ、最初は性能が劣り安価な新技術を軽視し、やがてその技術を持つ新興企業に市場を奪われる、とする理論。
問いよく経営されている業界のリーダー企業が、なぜ新しい技術の登場で地位を失うのか。
ダイナミック・ケイパビリティ
Dynamic Capabilities
環境が速く変わる中で競争優位を保つには、今ある資源を持つだけでは足りない。社内外の資源を組み合わせ直し、作り変える能力が重要だ、とする理論。
問い変化の激しい環境で、企業はどのようにして競争優位を保ち続けるのか。
折衷パラダイム(OLIパラダイム)
Eclectic Paradigm (OLI Framework)
企業が海外直接投資によって国外で生産を行うかどうか、どこで、どの形で行うかは、企業が持つ所有の優位(O)、国の立地の優位(L)、取引を市場に任せず社内で行う内部化の優位(I)の組み合わせで決まる、とする理論。
問い企業はなぜ、輸出やライセンス供与ではなく、海外に自ら拠点を持って生産するのか。
企業家的機会
Entrepreneurial Opportunity
企業家精神の研究を、新しい財やサービスを生み出す機会が、誰によって、どのように発見・評価・活用され、どのような結果をもたらすのかを調べる分野として定義し直した枠組み。
問い新しい事業の機会はなぜ存在し、なぜ一部の人だけがそれを見つけて活かすのか。
コミットメントのエスカレーション
Escalation of Commitment
自分で選んだ行動方針が悪い結果を生んでいるとき、人はその選択を正当化しようとして、かえってその方針にさらに資源を投じてしまう、とする理論。
問いなぜ人や組織は、うまくいっていない計画から手を引かず、むしろ投資を増やしてしまうのか。
進化経済学(組織ルーティン)
Evolutionary Theory of the Firm (Routines)
企業の行動は、合理的な計算よりも、習慣化した「ルーティン」によって行われる。ルーティンは遺伝子のように受け継がれ、探索によって変わり、市場で選択される、とする理論。
問い企業の能力や行動パターンは、どのように保たれ、どのように変わっていくのか。
探索と活用(知の探索・知の深化)
Exploration and Exploitation
組織の学習には、新しい可能性を試す「探索」と、既にあるものを磨く「活用」がある。活用は確実で早く成果が出るため優先されやすいが、探索を怠ると長期的な適応力を失う、とする枠組み。
問い組織は、新しいことへの挑戦と、今の強みを磨くことの間で、資源をどう配分すべきか。
ファイブ・フォース
Five Forces
業界の収益性は、既存企業どうしの競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力という五つの力で決まる。企業はこれらの力が弱い位置を選ぶべきだ、とする枠組み。
問いなぜ業界によって、儲かりやすさがこれほど違うのか。
基本戦略とバリューチェーン
Generic Strategies and the Value Chain
競争優位は、コストで他社より安くするか、他社と違う価値を提供するかのどちらかから生まれる。その源泉は、企業が行う一連の活動(バリューチェーン)の中にある、とする枠組み。
問い企業はどのような方法で、競合に対する優位を築けるのか。
ヒューリスティクスとバイアス
Heuristics and Biases
人は不確実なもとで確率や数値を判断するとき、少数の簡便な判断の方法(ヒューリスティクス)に頼る。それはふだん役に立つが、ときに系統的で予測可能な誤り(バイアス)を生む、という視点。
問い人は不確実な物事を判断するとき、どのような近道を使い、それによってどんな誤りを犯すのか。
高業績作業システム
High-Performance Work Systems
採用・選抜、訓練、成果に連動した報酬、従業員の参加といった人事施策を組み合わせて用いると、従業員の能力と意欲が高まり、離職の低下や生産性・財務業績の向上につながるとする視点。
問い企業の人事のやり方は、離職率や生産性、さらには企業の財務業績まで左右するのか。
人的資本理論
Human Capital Theory
教育、職業訓練、健康などへの支出を、人に体化された資源を増やして将来の所得を高める「投資」としてとらえ、個人や企業がどれだけ投資するかを費用と収益の比較で説明する理論。
問い人はなぜ、いまの所得をあきらめてまで教育や訓練を受け、企業は誰の訓練費用を負担するのか。
知識ベース・ビュー
Knowledge-Based View of the Firm
企業にとって最も重要な資源は知識である。企業は、個人がばらばらに持つ専門知識を統合し、製品やサービスに変えるための仕組みだ、とする視点。
問い知識を持つのは個人なのに、なぜ企業という組織がそれを活かす場として存在するのか。
外国企業の不利益(外国性の負債)
Liability of Foreignness
外国企業は、現地企業なら負わずにすむ追加の費用を負うため競争上不利になりやすく、多国籍企業はこの不利を本国から持ち込む組織能力などで乗り越える必要がある、とする理論。
問い外国の市場で事業を行う企業は、なぜ現地企業に比べて不利になるのか。そして、その不利をどう乗り越えるのか。
市場志向
Market Orientation
「顧客を大切にする」というマーケティングの考え方を、組織の具体的な活動として捉え直し、市場の情報を集め、部門間で共有し、それに組織全体で対応する度合いとして捉えるべきだ、とする理論。
問いマーケティング・コンセプトを実際に実行している組織とは、何をしている組織なのか。
オープン・イノベーション
Open Innovation
企業は研究開発を自社内だけで完結させるのではなく、外部の知識を取り込み、自社で使わない技術を外部に出すことで、より多くの価値を生み出せる、という視点。
問い企業は、自社の外にある知識や技術を、どのように使って新しい価値を生み出すのか。
両利きの経営(組織の両利き)
Organizational Ambidexterity
既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。
問い組織は、既存事業の効率化と新事業の開拓を、どうすれば両立できるのか。
組織アイデンティティ
Organizational Identity
「私たちは何者か」という問いへの、組織メンバーの答え。中心的で、独自で、時間を超えて続くと考えられている組織の特徴であり、戦略や変化への反応を方向づける。
問い組織メンバーは「自分たちは何者か」をどう理解し、それが行動にどう影響するのか。
組織の正統性
Organizational Legitimacy
組織の存在や行動が、社会の規範や価値観に照らして「適切だ」と受け入れられている状態。正統性があると資源や支持を得やすく、組織は正統性を獲得・維持・回復しようとする。
問い組織は、社会から「ふさわしい存在だ」と認められるために何をするのか。
パラドックス理論
Paradox Theory
組織には、短期と長期、効率と創造、統制と自由のように、矛盾しながらも両方必要な要素がつきまとう。どちらかを選ぶのではなく、両方を抱え続けることが長期的な成果につながる、とする理論。
問い組織は、互いに矛盾するが両方とも欠かせない要求に、どう向き合えばよいのか。
イノベーションからの利益獲得
Profiting from Innovation
新しい技術を最初に生み出した企業が、必ずしもその利益を得られるとは限らない。誰が利益を手にするかは、模倣のしやすさ、支配的な設計が定まっているか、製造や販売などの補完的資産を誰が持つかで決まる、とする理論。
問いなぜイノベーションを最初に生み出した企業が負け、後から来た模倣者や補完的資産の持ち主が利益を得ることがあるのか。
プロスペクト理論
Prospect Theory
人はリスクのある選択をするとき、最終的な財産の大きさではなく、基準点からの利得と損失で結果を評価し、確率もそのままではなく歪めて重みづけする、とする理論。
問い人はリスクのある選択を、実際にはどのように評価して決めているのか。
断続均衡モデル
Punctuated Equilibrium
組織は、長い安定期の中で少しずつしか変わらず、ときおり短期間に根本からまとめて変わる。変化は連続的ではなく、「安定」と「革命」の繰り返しとして起こる、とするモデル。
問い組織の大きな変化は、少しずつ積み重なって起こるのか、それとも一気に起こるのか。
関係性ビュー
Relational View
競争優位の源泉は、企業の内部だけでなく、企業と企業の関係の中にもある。関係に特化した投資や知識の共有によって、単独では得られない利益(関係レント)が生まれる、という視点。
問い企業どうしの協力関係は、なぜ競争優位の源泉になるのか。
資源依存理論
Resource Dependence Theory
組織は必要な資源を外部に頼っており、頼る相手に行動を縛られる。だから組織は、合併・提携・役員派遣などで依存をコントロールしようとする、とする理論。
問い組織は、外部の他者への依存をどのように管理しようとするのか。
資源ベース・ビュー
Resource-Based View
企業ごとの業績の差は、その企業が持つ資源の違いから生まれる。価値があり、希少で、真似しにくく、代わりがきかない資源を持つ企業が、持続的な競争優位を得るとする理論。
問い同じ業界にいながら、なぜ一部の企業だけが長く高い業績を上げ続けられるのか。
サービス・ドミナント・ロジック
Service-Dominant Logic
経済的な交換の根本にあるのはモノではなく、知識やスキルを相手のために用いる「サービス」であり、モノはサービスを届けるための手段にすぎない、という視点。
問い企業と顧客のあいだで交換されている価値の本質は、モノなのか、それともサービスなのか。
ソーシャル・キャピタル
Social Capital
人や集団がもつ関係のネットワークと、そこから得られる資源を「ソーシャル・キャピタル」ととらえ、それが知識の結合と交換を促し、新しい知識を生み出すことで組織の優位につながるとする理論。
問いなぜ組織は、市場での取引よりもうまく知識を生み出し、共有できるのか。
ステークホルダー理論
Stakeholder Theory
企業は株主だけのものではない。従業員、顧客、取引先、地域社会など、企業に影響を与え、影響を受けるすべての人々(ステークホルダー)の利害を考えて経営すべきだ、とする理論。
問い企業は誰のために経営されるべきで、多様な利害をどう調整するのか。
構造的空隙
Structural Holes
互いにつながっていない人々の間に位置する仲介者と、その位置から生じうる利点を考える。
問い異なる集団をつなぐ位置は、アイデアや成果にどう関わるのか。
技術的不連続とドミナント・デザイン
Technological Discontinuities and Dominant Design
技術は、飛躍的な変化(技術的不連続)が起きて複数の設計が競い合う混乱期を経て、一つの標準的な設計(ドミナント・デザイン)に落ち着き、その後は小さな改良が続く、という周期で進むとする理論。
問い技術はどのような周期で変化し、その変化は業界の企業にどんな影響を与えるのか。
取引費用理論
Transaction Cost Economics
取引には、相手を探し、交渉し、約束を守らせるためのコストがかかる。そのコストが大きい取引ほど、市場ではなく組織の内部(階層)で行われる、とする理論。
問いある活動は、なぜ市場で外部から買うのではなく、組織の内部で行われるのか。
二面市場・プラットフォーム
Two-Sided Markets and Platforms
異なる二つの利用者グループを仲介するプラットフォームでは、一方の参加者が増えるほど他方にとっての価値が高まる。そのため価格や戦略は、両側のバランスを見て決めなければならない、とする理論。
問いプラットフォーム企業は、なぜ一方の利用者を無料にしたり、補助したりするのか。
アッパーエシュロン理論(経営上層部理論)
Upper Echelons Theory
組織は、そのトップ経営者たちの映し鏡である。経営者の経験・価値観・性格が状況の見え方を左右し、それが戦略の選択と業績に表れる、とする理論。
問い経営者が誰であるかは、企業の戦略や業績にどの程度影響するのか。
概念・現象 1
概念・現象組織学習
Organizational Learning
組織が経験から推論を引き出し、それをルーティンや知識として蓄え、将来の行動を変えていく現象。個人の学習の総和ではなく、組織としての記憶や手順に残る点が特徴である。
問い組織は、経験から何をどのように学び、それはどこに蓄えられるのか。
論文・書籍 1
論文・書籍Exploration and Exploitation in Organizational Learning
組織学習における探索と活用March 1991 · Organization Science
新しい可能性の探索と、既存の確実性の活用の間の配分を、組織学習の中心問題として定式化した論文。二つのシミュレーション・モデルで、活用に偏る学習が長期的には組織を弱めうることを示した。
問い組織は、新しいことを試す探索と、今あるものを磨く活用に、資源をどう配分すべきか。