パス・ゴール理論Path-Goal Theory of Leader Effectiveness
一言で言うとリーダーの役割は、部下が仕事の目標を達成したときに得られる報酬を高め、そこに至る道筋(パス)を明確にし、障害を取り除くことにあり、どのリーダー行動が効果的かは仕事の性質などの状況によって変わるとする理論。
中核的な問い
部下に細かく指示を出すリーダーが歓迎される職場もあれば、同じ指示が口うるさいと嫌がられる職場もある。リーダーの行動が部下のやる気や満足に与える影響は、なぜ場面によって違うのか。
主張とメカニズム
House (1971) は、リーダーの動機づけの機能を「仕事の目標を達成したときに部下が得る個人的な見返りを増やし、その見返りへの道筋を明確にし、障害や落とし穴を減らし、途中で満足を得る機会を増やすことで、その道筋をたどりやすくすること」と述べた。この考え方は、人は努力が成果につながり、成果が価値ある報酬につながると期待するほど動機づけられる、という期待理論にもとづいている。
原典は、当時のリーダーシップ研究で中心的だった二つの行動、構造づくり(仕事の役割や手順を明確にする行動)と配慮(部下への気づかいや支援の行動)を取り上げ、その効果が状況で変わるという仮説を立てた。仕事があいまいなときには、構造づくりが道筋を明確にするため、部下の満足や期待を高める。逆に、仕事がすでに明確なときには、同じ行動は余計な統制と受け取られやすい。また、仕事そのものが退屈だったりストレスが多かったりするときには、配慮が満足を高める効果が大きい、とした。House はこれらの仮説を二つの組織のデータで検討している。
なお、よく知られた「指示型・支援型・参加型・達成志向型」の四つのリーダー行動は、1971年の原典のものではなく、その後の定式化で整理されたものである。House (1996) はこの経緯を振り返り、理論をさらに広げた再定式化を示した。
身近な例
たとえば、アルバイト先に入ったばかりの学生がいるとしよう。仕事の手順が分からず戸惑っているとき、店長が手順をていねいに示してくれれば、どう頑張ればよいかが分かり、やる気が出る。ところが半年たって仕事に慣れた後も、店長が同じように細かく指示し続けると、今度は窮屈に感じるかもしれない。パス・ゴール理論は、同じリーダー行動の効果が、仕事のあいまいさという状況によって変わることを、このように説明する。
主要概念
- パス・ゴール(path-goal)
- 部下が目標(ゴール)とそこから得られる報酬に至る道筋(パス)。リーダーはこの道筋を明確にし、たどりやすくする役割をもつとされる。
- 期待理論(expectancy theory)
- 努力が成果につながり、成果が価値ある報酬につながるという期待が高いほど、人は動機づけられるとする理論。
- 構造づくり(initiating structure)
- 部下の役割、仕事の手順、目標を明確にし、組み立てるリーダーの行動。
- 配慮(consideration)
- 部下に気づかいを示し、支援的で友好的な関係をつくるリーダーの行動。
代表的な展開研究
- House, R. J. (1996). Path-goal theory of leadership: Lessons, legacy, and a reformulated theory. The Leadership Quarterly. DOI ↗原典以降の理論の展開と検証の歴史を振り返り、扱うリーダー行動の種類を広げた再定式化を示した。
- Wofford, J. C., & Liska, L. Z. (1993). Path-goal theories of leadership: A meta-analysis. Journal of Management. DOI ↗パス・ゴール理論の仮説を検証した研究をメタ分析で統合し、支持される仮説と支持されない仮説があることを示した。
批判と境界条件
Wofford & Liska (1993) のメタ分析によれば、理論が予測する状況の調整効果は一部しか支持されず、研究間で結果にばらつきがあった。彼らは、多くの検証研究に方法上の問題があり、理論が十分に検証されてきたとは言えないとも指摘している。また House (1996) 自身も、原典以降の検証の多くが、この理論のために作られたのではない既存のリーダー行動の尺度を使っていたことなどを限界として振り返っている。
研究上の位置づけ
出典
- 原典House, R. J. (1971). A path goal theory of leader effectiveness. Administrative Science Quarterly. DOI ↗
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