理論・視点

ウプサラ・モデルUppsala Internationalization Model

一言で言うと

企業の国際化は、海外市場についての経験的な知識を少しずつ蓄え、それに応じて海外市場への資源の投入を段階的に増やしていく過程であり、知識と投入が互いに強め合いながら進む、とする理論。

説明したい問い企業はなぜ、いきなり海外に大きな投資をするのではなく、少しずつ段階を踏んで国際化していくのか。
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中核的な問い

スウェーデン企業の国際化を調べると、多くの企業が似た道筋をたどっていた。まず近くて似た国に、代理店を通じた輸出という小さな形で出ていき、経験を積むにつれて販売子会社、さらには生産拠点へと関わりを深めていく。なぜ企業はこのように少しずつ国際化するのか。

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主張とメカニズム

Johanson & Vahlne (1977) のモデルは、国際化を「海外市場と海外事業についての知識を徐々に獲得し、統合し、活用していくこと」と「海外市場へのコミットメント(資源の投入)を段階的に増やしていくこと」の過程として捉える。このモデルは、Johanson & Wiedersheim-Paul (1975) がスウェーデン企業の事例で見いだした段階的なパターンを、理論として説明しようとしたものである。そこでは、定期的な輸出なし、代理人を通じた輸出、販売子会社、生産子会社という「設立の連鎖」と、心理的距離の近い国から先に進出する傾向が示されていた。心理的距離とは、市場との間の情報の流れを妨げる要因の総和であり、言語、教育、商慣行、文化、産業の発展度の違いなどを含む。

モデルは、ある時点の状態を表す二つの要素と、変化を表す二つの要素からなる。状態の要素は、市場についての知識と、市場へのコミットメント(投入した資源の量と、それを他に振り向けにくい度合い)である。変化の要素は、コミットメントの決定と、現在の事業活動である。企業は、いまの知識とコミットメントをもとに次の投入を決める。そして、現地での事業活動を通じて新しい経験的知識を得る。経験的知識は、本や講義で教えられる客観的な知識とは違い、実際に市場で活動しなければ得にくい。この知識が不確実性を減らし、次の段階の投入を可能にする。こうして知識と投入が循環しながら、国際化は少しずつ進む。

このモデルは、企業が成長を目指しつつもリスクを低く保とうとする、という行動理論的な前提に立っている。そのため、企業は一度に大きく賭けるのではなく、知識が増えるのに合わせて小刻みに投入を増やすと考える。

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身近な例

たとえば、ある地方の食品メーカーが海外進出を考えているとしよう。最初は、文化や食習慣が比較的近い国の輸入業者に商品を卸すことから始める。何年か取引を続けるうちに、現地の好みや流通の仕組み、取引先との付き合い方が分かってくる。その経験をもとに、現地に販売会社をつくる。さらに売上が安定し、市場への理解が深まったところで、ようやく現地に工場を建てる決断をする。そして、その経験を生かして、次はもう少し遠い国へと進んでいく。

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主要概念

心理的距離(psychic distance)
言語、教育、商慣行、文化、産業の発展度の違いなど、市場との間の情報の流れを妨げる要因の総和。
市場コミットメント(market commitment)
ある市場に投入した資源の量と、その資源を他の用途に振り向けにくい度合い。
経験的知識(experiential knowledge)
実際にその市場で事業を行うことを通じてしか得にくい、具体的な知識。
設立の連鎖(establishment chain)
輸出なしから代理人経由の輸出、販売子会社、生産子会社へと、市場への関与が段階的に深まっていく順序。
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代表的な展開研究

  • Johanson, J., & Vahlne, J.-E. (2009). The Uppsala internationalization process model revisited: From liability of foreignness to liability of outsidership. Journal of International Business Studies. DOI ↗市場を企業間関係のネットワークとして捉え直し、国際化の障害を外国であることよりも、関係ネットワークの外にいることに求めるよう、モデルを改訂した。
  • Forsgren, M. (2002). The concept of learning in the Uppsala internationalization process model: A critical review. International Business Review. DOI ↗モデルが想定する学習の捉え方を検討し、企業は自らの経験以外の方法でも知識を得られることを論じた。
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批判と境界条件

著者たち自身が、後に Johanson & Vahlne (1990) で、このモデルが当てはまりにくい場合を挙げている。企業が大きな資源を持っていて投入の影響が相対的に小さい場合、市場の条件が安定していて同質的な場合、似た市場での経験がある場合には、段階を飛ばした進出が起こりうるという。また、Oviatt & McDougall (1994) は、設立当初から複数の国で事業を行う国際的な新興企業(インターナショナル・ニュー・ベンチャー)が存在することを示し、段階的な国際化を前提とする見方に疑問を投げかけた。Forsgren (2002) は、企業は模倣や他社の買収などを通じても知識を得られるため、自らの経験に頼る学習だけで国際化の速さを説明するのは狭いと論じた。

研究上の位置づけ

原典Johanson, J., & Vahlne, J.-E. (1977)
The internationalization process of the firm: A model of knowledge development and increasing foreign market commitments
分類Model
分析単位組織
理論系譜行動論 · プロセス
REFERENCES

出典

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