Diffusion of Innovationsイノベーションの普及
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一言で言うと新しいアイデアや製品は、人々のあいだのコミュニケーションを通じて時間をかけて広がり、その速さはイノベーションの性質や採用する人の特徴によって決まる、とする理論。
Diffusion of innovations
中核的な問い
便利な新製品でも、すぐに誰もが使うわけではない。ある人はすぐに試し、ある人は長いあいだ使わない。新しいものが社会に広がる速さや順番は、何によって決まるのか。
主張とメカニズム
Rogers (1962) は、農業や医療、教育などの多くの研究をまとめ、普及を「イノベーションが、あるコミュニケーション経路を通じて、時間をかけて社会システムの成員に伝わる過程」として捉えた。採用する人の数を時間に沿って累計すると、多くの場合S字型の曲線を描く。
採用の時期によって、人々はイノベーター、初期採用者、初期多数派、後期多数派、遅滞者の五つに分けられる。初期採用者の中には周囲に影響を与えるオピニオン・リーダーが多く、その人たちが採用すると普及が加速しやすい。
また、普及の速さに影響するイノベーションの性質として、相対的優位性(今あるものより良いか)、両立性(今の価値観や習慣に合うか)、複雑性(分かりやすいか)、試行可能性(試せるか)、観察可能性(成果が見えるか)の五つが挙げられる。
身近な例
新しい決済アプリは、まず新しいもの好きの人が使い始める。職場や友人の中で詳しい人が勧めると周りも使うようになり、「みんな使っている」段階になって、慎重な人もようやく使い始める。初回の割引で「試しやすく」するのは、試行可能性を高める工夫といえる。
主要概念
- 採用者カテゴリー(adopter categories)
- イノベーションを採用する時期の早い順に、社会の成員を五つに分けた区分。
- オピニオン・リーダー(opinion leader)
- 周囲の人の態度や行動に、非公式に影響を与えることができる人。
- 相対的優位性(relative advantage)
- イノベーションが、それに置き換わる既存のものより優れていると受け止められる程度。
- S字カーブ(S-shaped curve)
- 採用者の累計が、最初はゆっくり、途中で急速に増え、最後に頭打ちになる形。
代表的な展開研究
- Bass, F. M. (1969). A new product growth for model consumer durables. Management Science. DOI ↗外部からの情報による採用と、既存の採用者からの影響による採用とを分けて、新製品の普及を数式で表すモデルを示した。
- Abrahamson, E. (1991). Managerial fads and fashions: The diffusion and rejection of innovations. Academy of Management Review. DOI ↗効率的なイノベーションが広がり、非効率なものは広がらないという前提を問い直し、流行や模倣による普及と棄却を論じた。
批判と境界条件
広まったイノベーションばかりを研究し、広まらなかったものや、良いものは広まるべきだという前提(プロイノベーション・バイアス)に偏りがちだと、Rogers 自身も指摘している。採用の遅い人を「遅れている」と見なしがちで、採用しない合理的な理由や、社会経済的な格差を見落としやすい。採用後に使い方が変えられたり、やめられたりする過程も十分に扱えていない。
出典
- 原典Rogers, E. M. (1962). Diffusion of innovations. Free Press.
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