理論・視点

資源保存理論(COR理論)Conservation of Resources Theory

一言で言うと

人は自分が価値を置く資源を保ち、守り、増やそうとしており、資源を失いそうになること、実際に失うこと、資源を投じたのに見返りが得られないことがストレスを生む、とする理論。資源の損失は獲得よりも強く感じられ、損失は次の損失を呼びやすい。

説明したい問い人はどんなときにストレスを感じ、それにどう対処しようとするのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

ストレスとは何か。Hobfoll (1989) は、それまでの主なストレス理論のうち、要求と対処能力の釣り合いに基づくモデルや、本人の評価に基づくモデルは、同語反復で循環した説明に陥っていると批判した。そこで、人が何を大切にし、何を失うことを恐れるのかという資源の観点から、ストレスを捉え直そうとした。

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主張とメカニズム

Hobfoll (1989) の基本的な前提は、人は資源を保ち、守り、増やそうとしているのであり、脅威となるのは、価値ある資源を失う可能性や実際の損失だ、というものである。ここから、ストレスは次の三つの状況への反応として定義される。資源が差し引きで失われそうになること、資源が差し引きで失われること、そして資源を投じたのに見返りの資源が得られないことである。

資源とは、本人が価値を置く、あるいはそれを手に入れる手段となる、物、個人の特性、状態、エネルギーである。Hobfoll は資源を四つに分けた。住まいのような物的資源、結婚や終身在職権、勤続年数のような状態、個人の特性、そして時間、お金、知識のようなエネルギーである。社会的な支えは、どれか一つの種類には収まらないとした。

人はストレスにさらされると、資源の損失を最小限に抑えようとする。ストレスがないときには、将来の損失に備えて資源の蓄えをつくろうとする。ただし、対処すること自体が資源を消費する。資源の乏しい人は、損失を埋め合わせる資源がないため、損失が次の損失を呼ぶ損失の螺旋に陥りやすい。

Halbesleben et al. (2014) は、その後の組織研究をふまえて、この理論の原則を整理した。資源の損失は、獲得よりも強く意識される。人は、資源を得たり、損失から身を守ったり、損失から回復したりするために、資源を投じなければならない。資源を多く持つ人ほど、さらに資源を得やすく、少ない人ほど失いやすい。最初の損失は次の損失を、最初の獲得は次の獲得を呼ぶ(獲得の螺旋)。資源が足りなくなると、人は残った資源を守るために防衛的になる。Lee & Ashforth (1996) の燃え尽きのメタ分析でも、情緒的消耗感は、仕事の資源より要求度と強く関連しており、著者らは、これを損失の方が強く意識されるという主張と整合的だと解釈した。

Halbesleben et al. (2014) は、週末、長期休暇(サバティカル)、夜の時間、休憩、仕事から心理的に離れることなど、資源を回復させる機会の重要性も指摘している。資源の回復が不十分なまま消耗が続くと、燃え尽きにつながると考えられるとしている。

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身近な例

繁忙期が3か月続いている営業職の人がいるとしよう。睡眠時間が削られ、趣味の時間もなくなり、家族と話す余裕も減った。そのうえ、力を注いだ大口の案件が失注した。時間と気力を投じたのに、見返りが得られなかったことになる。この人は、新しい提案に挑戦する気力をなくし、今ある顧客を守ることだけに力を使うようになった。

資源を失い、その埋め合わせもできないまま、残った資源を守ろうとして守りに入るという、資源保存理論が描く動きの例である。

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主要概念

資源(resources)
本人が価値を置く、あるいはそれを得る手段となる、物、状態、個人の特性、エネルギー。Halbesleben et al. (2014) は「本人が目標の達成に役立つと知覚するもの」と定義し直した。
資源の損失の優位(primacy of resource loss)
資源の損失は、資源の獲得よりも強く意識される、という原則。
資源の投資(resource investment)
資源を得たり、損失から身を守ったり、回復したりするために、手持ちの資源を投じること。
損失の螺旋・獲得の螺旋(loss spiral / gain spiral)
最初の損失が次の損失を呼び、最初の獲得が次の獲得を呼ぶ、という連鎖。
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代表的な展開研究

  • Halbesleben, J. R. B., Neveu, J.-P., Paustian-Underdahl, S. C., & Westman, M. (2014). Getting to the "COR": Understanding the role of resources in conservation of resources theory. Journal of Management. DOI ↗組織研究における資源保存理論の使われ方を整理し、原則と派生命題をまとめた。資源の定義をめぐる問題を論じ、資源を「目標の達成に役立つと知覚されるもの」と定義し直した。
  • Lee, R. T., & Ashforth, B. E. (1996). A meta-analytic examination of the correlates of the three dimensions of job burnout. Journal of Applied Psychology. DOI ↗燃え尽きの相関要因をメタ分析し、情緒的消耗感が資源より要求度と強く関連するという結果を、資源の損失の優位と整合的なものとして解釈した。
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批判と境界条件

Halbesleben et al. (2014) は、この理論に対するよくある批判として、ほとんどどんな良いものでも資源とみなせてしまうことを挙げた。また、資源を「価値を置くもの」と定義すると、資源とその結果が混同されてしまうとも指摘した。自分たちの新しい定義も、なお曖昧さが残ることを認めている。そのほか、脅威と実際の損失がほとんど区別されていないこと、時間の要素が十分に扱われていないこと、多くの研究が横断的な設計であることも課題として挙げている。

Hobfoll (1989) 自身も、資源は人々に平等に分配されているわけではないため、資源の不足を本人の責任とみなす「被害者を責める」見方に陥る危険があると注意した。また、ある資源がかえって害になる場合もありうることを認めている。

研究上の位置づけ

原典Hobfoll, S. E. (1989)
Conservation of resources: A new attempt at conceptualizing stress
分類Theory
研究分野組織行動論
地図の区画組織行動
分析単位個人
理論系譜心理学
REFERENCES

出典

  • 原典Hobfoll, S. E. (1989). Conservation of resources: A new attempt at conceptualizing stress. American Psychologist. DOI ↗

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。