理論・視点

User Innovationユーザー・イノベーション

原典照合前この項目は、監修者が原典と照合する前の段階です。引用する場合は必ず原典を確認してください。照合について

一言で言うと

新しい製品やサービスの多くは、メーカーではなく、それを使う人(ユーザー)が自分の必要から生み出している。とくに市場の先端にいる「リードユーザー」は、将来の需要を先取りした発想の源になる、とする理論。

説明したい問いなぜメーカーではなく、製品を使うユーザーが新しいものを生み出すことがあるのか。
原典von Hippel, E. (1986)
Lead users: A source of novel product concepts
分類Theory
分析単位個人 · 組織 · コミュニティ
理論系譜経済学 · 行動論
01

中核的な問い

従来の考え方では、新製品はメーカーの研究開発部門が考え、ユーザーはそれを買うだけの存在だった。しかし実際には、使う人が自分で道具を改良したり、まったく新しいものを作ったりしている。イノベーションの担い手をメーカーに限らず捉え直すと、何が見えてくるのか。

02

主張とメカニズム

von Hippel (1986) は、一般の顧客に聞き取りをしても、今ある製品の延長にある意見しか出にくいと指摘した。そこで注目したのが「リードユーザー」である。リードユーザーとは、市場の大多数が将来抱く必要を、何か月も何年も先に抱えている人や組織で、しかもその問題を解決できれば大きな利益を得る立場にある。

解決の利益が大きいので、リードユーザーは既製品を待たずに自分で解決策を作ることが多い。また、使う現場の細かな事情は外に伝えにくく、メーカーより使う本人のほうがよく知っている。そのため、企業はリードユーザーを見つけ出し、その工夫から学ぶことで、新しい製品の構想を得られる。のちの研究は、ユーザー同士がコミュニティで工夫を無償で共有する現象にも対象を広げた。

03

身近な例

アウトドアやスポーツの愛好家が、市販の道具に満足できずに自分で改造し、仲間内で作り方を教え合う。やがてその工夫が評判になり、メーカーが製品として売り出す。ソフトウェアでも、利用者が自分の困りごとを解決するために書いたプログラムが公開され、広く使われるようになることがある。

04

主要概念

リードユーザー(lead user)
市場の大多数より早く新しい必要に直面し、その解決から大きな利益を得る利用者。
ユーザー・イノベーション(user innovation)
製品を売る側ではなく、使う側が生み出すイノベーション。
情報の粘着性(sticky information)
使用現場の細かな知識のように、他者へ移すのに手間やコストがかかる情報の性質。
ユーザー・コミュニティ(user community)
利用者同士が助け合い、工夫や知識を共有する集まり。
05

代表的な展開研究

  • Urban, G. L., & von Hippel, E. (1988). Lead user analyses for the development of new industrial products. Management Science. DOI ↗リードユーザーの考えを産業財の製品開発に当てはめ、その手法の有効性を検証した。
  • Franke, N., & Shah, S. (2003). How communities support innovative activities: An exploration of assistance and sharing among end-users. Research Policy. DOI ↗スポーツ愛好家のコミュニティで、利用者同士が工夫を助け合い共有する様子を調べた。
06

批判と境界条件

ユーザーによる工夫がどの程度の割合で市場の成功につながるのかは、分野によって大きく異なる。リードユーザーを見つけて協力を得るには手間がかかり、多くの企業で定着しにくいとの指摘もある。また、大規模な設備や専門技術を要する分野では、ユーザーが自ら作れる範囲は限られる。

REFERENCES

出典

  • 原典von Hippel, E. (1986). Lead users: A source of novel product concepts. Management Science. DOI ↗

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。